前払式支払手段の届出・登録が必要か

前払式支払手段の届出・登録が必要か

1. 前払式支払手段とは

ゲームアプリや提供サービス内でポイントや通貨を発行する場合、資金決済法に基づく届出や登録が必要になる可能性があります。必要な対応を怠って法令違反にならないように注意しましょう。

前払式支払手段とは、利用者が金銭を支払い、後日、物品やサービスの提供を受ける際に使用できるポイントや電子マネーなどを指します(資金決済に関する法律3条1項参照)。具体的には、商品券、プリペイドカード、電子マネー、ゲーム内通貨などが該当します。

2. 前払式支払手段の類型

前払式支払手段には、次の2つの類型があります(法3条4項・5項参照)。

自家型前払式支払手段: 発行者自身が提供するサービス内でのみ使用可能なもの。例として、自社のゲーム内でのみ利用できるアイテムや通貨が該当します。

第三者型前払式支払手段: 発行者以外の第三者が提供するサービスでも使用可能なもの。例えば、複数の加盟店で利用できるプリペイドカードや電子マネーがこれに当たります。

ただし、以下のような場合は、前払式支払手段の登録は不要となります。

① 無償で提供されるもの

利用者が金銭を支払わずに取得できるポイントは、前払式支払手段に該当しないため、届出や登録は不要です。航空会社が発行するマイレージなどはこれに該当します。

② 6か月以内の使用期限が設定されているもの

資金決済法では、発行日から6か月以内に使用期限が設定された前払式支払手段は、同法の適用対象外とされています(法4条2号、資金決済に関する法律施行令4条2項)。ただし、アプリ内で前払式支払手段を発行する場合、Appleのレギュレーションで有効期限を設定することができないため注意が必要です(執筆時点ではApp Reviewガイドライン3.1.1に「アプリ内課金で購入されたクレジットやゲーム内通貨に有効期限を設定することはできません。」と記載されています)。

3. 届出・登録が必要となる場合

自家型前払式支払手段の場合は、事前の届出・登録は不要です。毎年3月31日、9月30日(基準日)における利用者が持つ前払式支払手段の未使用残高の合計額が1,000万円を超えた場合、基準日の翌日から2ヶ月以内に財務局長等への届出が必要となります。また、基準日未使用残高の2分の1以上の金額を供託所(通常は法務局)に供託か保全契約を締結する義務等が発生します。供託する場合は、例えば基準日未使用残高が1,200万円の場合、600万円以上を供託する必要があります。
報告書は、一般社団法人日本資金決済業協会のホームページからダウンロードできます。作成自体にそこまで時間はかかりませんが、報告書には、供託をしたことを証する書類も提出する必要がありますので、余裕を持った対応が必要です。

一般社団法人日本資金決済業協会のホームページ 
https://www.s-kessai.jp/businesses/funds_transfer_b.html

第三者型前払式支払手段の場合、発行前に財務局長等の登録を受ける必要があります。登録のための各種提出書式は、上記記載の資金決済業協会のホームページから取得できますが、その他に、役員の住民票等の公的書類、前払式支払手段の発行の業務に関する社内規則・組織図、加盟店との契約内容を証する書面(加盟店契約書の雛形、加盟店規約等)も必要となります。
登録のために、これらの書類を準備し、財務事務所の担当者とアポイントメントをとり、書類を審査してもらいながら質問等があればそれに対応する必要があります。そのため、登録まではある程度時間がかかります。

(参考)

前払式支払手段に関する内閣府令第十六条 

法第八条第二項に規定する内閣府令で定める書類は、次に掲げる書類(官公署が証明する書類については、申請の日前三月以内に発行されたものに限る。)とする。

一 別紙様式第四号により作成した法第十条第一項各号に該当しないことを誓約する書面

二 役員の住民票の抄本(当該役員が外国人である場合には、在留カードの写し、特別永住者証明書の写し又は住民票の抄本)又はこれに代わる書面

三 役員の旧氏及び名を当該役員の氏名に併せて第十四条の規定による登録申請書に記載した場合において、前号に掲げる書類が当該旧氏及び名を証するものでないときは、当該旧氏及び名を証する書面

四 役員が法第十条第一項第九号ロに該当しない旨の官公署の証明書(当該役員が外国人である場合には、別紙様式第五号により作成した誓約書)又はこれに代わる書面

五 別紙様式第六号又は第七号により作成した役員の履歴書又は沿革

六 別紙様式第八号により作成した株主又は社員の名簿並びに定款又は寄附行為及び登記事項証明書又はこれに代わる書面

七 最終の貸借対照表(関連する注記を含む。)及び損益計算書(関連する注記を含む。)又はこれらに代わる書面(登録の申請の日を含む事業年度に設立された法人にあっては、会社法第四百三十五条第一項又は第六百十七条第一項の規定により作成するその成立の日における貸借対照表又はこれに代わる書面)

八 会計監査人設置会社である場合にあっては、登録の申請の日を含む事業年度の前事業年度の会社法第三百九十六条第一項の規定による会計監査報告の内容を記載した書面

九 前払式支払手段の発行の業務に関する社内規則その他これに準ずるもの

十 前払式支払手段の発行の業務に関する組織図(内部管理に関する業務を行う組織を含む。)

十一 第三者型発行者と加盟店との間の契約内容を証する書面

十二 前払式支払手段の発行の業務の一部を第三者に委託する場合にあっては、当該委託に係る契約の契約書

十三 令第五条第一項第二号ニに規定する預貯金が登録申請者を名義人とする口座において保有されることが当該登録申請者の定める規則に記載されている場合にあっては、当該預貯金を預け入れる銀行等の商号又は名称及び所在地並びに当該預貯金口座が開設されていることを確認できる書類

十四 その他参考となる事項を記載した書面

4. 登録後の対応

前払式支払手段発行者は、金融庁が作成したガイドラインに準拠する必要があります。遵守すべき項目は、例えばコンプライアンス態勢、反社会的勢力による被害の防止、利用者に関する情報管理態勢、帳簿書類の作成、システム・事務リスク管理、外部委託管理、苦情処理態勢など多岐にわたります。
どこまでやればいいかという明確な記載はありませんので、各社の事業規模に応じて体制構築していく必要があります。

「前払式支払手段発行者関係」参照
https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/kaisya/index.html

5. まとめ

ポイント等の発行を検討する際は、前払式支払手段に該当するかを慎重に判断し、必要に応じて適切な届出や登録手続きを行う必要があります。特に、第三者型前払式支払手段を発行する場合、登録やその後の態勢構築には相応の知識が求められます。何かあれば遠慮なくご相談ください。

加山 綾一
加山 綾一かやま りょういち 弁護士
法律事務所LAB-01 代表弁護士
LINE株式会社、インテグラル株式会社などを経て、法律事務所LAB-01に所属。新規事業への助言、上場のための社内体制構築、パートナー企業との提携、組織マネジメントといったインハウスでの経験を活かし、法務観点に限らない助言・支援で、企業の成長をサポートしている。スタートアップ・中小企業の顧問業務を多数手がける。

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